二項係数・二項定理を考える②(多項式の計算)【大学入試数学】【数学ⅠA・ⅡB】

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どうも!受験コーチSHUです!

分野別解説シリーズ「二項係数・二項定理を考える」の第2回です。
第1回はこちらから→ 二項係数・二項定理を考える①(二項係数の性質・典型問題)【大学入試数学】【数学ⅠA・ⅡB】

前回は、二項係数の性質や、多項式の展開における係数、そして整数問題としての側面を扱いました。今回は、多項式の計算の問題を扱います。よく出題されるのは、n次の多項式をある多項式で割ったときの余りや割り切れるかどうかという問題です。

「割り算」と言う意味では整数における場合と近いのですが、ここで明確に区別したいのが整数の割り算と、多項式の割り算です。ここの区別が曖昧なまま入試演習に取り組み、何度も間違える生徒が非常に多いです。なんなら、難関大を受験する生徒ですらわかっていないことがあります。まずは、それぞれの割り算についてきちんと復習するところから始めましょう。

2つの「割り算」

高校数学で登場する「割り算」には「整数の割り算」と「多項式の割り算」があります。それぞれ定義が異なるため、きちんと確認しなければなりません。

整数の割り算 ある整数\( a \)を整数\( b \)で割るとは、\( a \)を$$ a = bq + r $$と表すことである。ただし、\( q, r \)は整数であり、\( 0 ≦ r < |b| \)である。また、\( q, r \)はそれぞれ「商」「余り」と呼ばれる。

 

多項式の割り算 \( x \)の多項式\( f(x) \)を、\( x \)の多項式 \( g(x) \)で割るとは、\( f(x) \)を$$ f(x) = g(x)q(x) + r(x) $$と表すことである。ただし、\( q(x), r(x) \)は共に\( x \)の多項式であり、\( q(x) \)の次数は\( r(x) \)の次数よりも大きい。また、\( q(x), r(x) \)はそれぞれ「商」「余り」と呼ばれる。

この違いが分かるでしょうか?

例えば、このような場合を考えれば違いが分かると思います。

例題1 \( n \)を自然数とする。自然数\( n^3 \)を自然数\( n^2 + 1 \)で割った商と余りを求めよ。

さて、この問題ではどちらの「割り算」でしょうか?

もちろん、自然数を自然数で割るわけですから「整数の割り算」になります。めちゃめちゃ多い間違いは、これを多項式の割り算とみなして$$ n^3 = (n^2 + 1)n – n $$となるから、商は\( n \)で、余りは\( -n \)というものです。もちろん、これでは誤りになります。

整数の割り算の定義から、余りは割る数よりも小さい0以上の整数にならなければなりません。今、\( -n \)は負の整数ですから定義に反しています。余りが負になるということは、現在得られている商は実際の商よりも大きくなっているということです。この誤答例において商を\( n-1 \)とすると、余りは正になり、余りが満たす不等式も成立しますから実際の商は\( n-1 \)であり、この時余りは\( n^2 – n + 1 \)と計算されます。\( 0 ≦ n^2 – n + 1 < | n^2 + 1| \)が成り立っていますから、どうやらこれで良さそうです。

以上より、例題1の答えは$$ 商は(n-1)、余りはn^2 – n + 1 $$です。

多項式の割り算と二項定理

さて本題です。前回の記事では「整数の割り算」を考えました。上の例題1を見ればわかるように、整数の割り算と多項式の割り算は、余りの正負や次数などに注意しなければなりませんが、操作としてはほとんど同じように考えることができます。

今日扱う例題はこちら!

例題2 多項式\( P(x) = x^{2n} – nx^{n+1} + nx^{n-1} – 1 \)について、以下の問いに答えよ。ただし、\( n\)は2以上の整数とする。

    (1)\( Q(t) = P(t + 1) \)とおく。多項式\( Q(t) \)の定数項、\( t \)の係数および\( t^2 \)の係数は\( 0 \)であることを示せ。
    (2)\( P(x) \)は\( (x-1)^3 \)で割り切れるが、\( (x-1)^4 \)では割り切れないことを示せ。
    (3)方程式\( P(x) = 0 \)の整数解は\( 1 \)および\( -1 \)のみであることを示せ。

それでは発想と解説に入ります。

発想
今回も前回同様に、n乗が登場する。\( (a + b)^n \)の形では議論しにくいので、展開してそれぞれの項の係数を調べることにより、割り算が可能か確かめるのが良さそう。n乗の展開には二項定理(場合によっては多項定理。今回は二項)を用いればよい。割り算を行うことと、係数の関係性について考える必要がありそうか。

解答例
(1)$$ Q(t) = (t + 1)^{2n} – n(t + 1)^{n + 1}+ n(t + 1)^{n – 1} – 1 $$であり、\( t^{0}, t^{1}, t^{2} \)の項に注目して二項定理を適用する。

\( (t + 1)^{2n} \)において、定数項、\( t \)および\( t^2 \)の係数は、それぞれ二項定理より\( 1^{2n}=1, {}_{2n} \mathrm{C} _1 = 2n, {}_{2n} \mathrm{C} _2 = n(2n – 1) \)である。また、\( -n(t + 1)^{n + 1} \)において、定数項、\( t \)および\( t^2 \)の係数は、それぞれ二項定理より\( -n, \) \( -n \times {}_{n + 1} \mathrm{C} _1 = -n(n + 1), \) \(n \times {}_{n + 1} \mathrm{C} _2 = \displaystyle -\frac{(n + 1)n^2}{2} \)である。更に、\( n(t + 1)^{n – 1} \)における定数項、\( t \)および\( t^2 \)の係数を考えるが、この時\( n \)の値で場合分けをする。

\( n > 2 \)の時、係数はそれぞれ\( n, \) \( n \times {}_{n – 1} \mathrm{C} _1 = n(n – 1), \) \( n \times {}_{n-1} \mathrm{C} _2 = \displaystyle \frac{n(n-1)(n-2)}{2} \)となるので、以上より\( Q(t) \)の定数項、\( t \)の係数および\( t^2 \)の係数は
\begin{eqnarray}
(定数項)& = & 1 -n + n -1 = 0 \\
( t の係数)& = & 2n -n(n + 1) +n(n – 1) = 0 \\
( t^2 の係数)& = & n(2n -1) \displaystyle -\frac{(n + 1)n^2}{2} + \displaystyle \frac{n(n-1)(n-2)}{2} = 0
\end{eqnarray}

また、\( n = 2 \)の時、\( n(t + 1)^{n – 1} \)における定数項、\( t \)および\( t^2 \)の係数はそれぞれ\( 2, 2, 0 \)となるので、以上より\( Q(t) \)の定数項、\( t \)の係数および\( t^2 \)の係数は
\begin{eqnarray}
(定数項)& = & 1- 2 + 2 – 1 = 0 \\
(tの係数) & = & 4 – 6 + 2 = 0 \\
(t^2係数)& = & 6 – 6 = 0
\end{eqnarray}

(2) \( Q(x) = P(x + 1) \)である。\( x – 1 = y \)とおくとき、\( P(x) \) が\( (x – 1)^3 \)で割り切れることを示すのは、\( Q(y) = P(y + 1) \)が\( y^3 \)で割り切れることを示すのに等しい。
※(解答例注)これは、(1)で\( t = y \)としたと捉えることができる。

\( Q(y) = P(y + 1) \)における、\( y^3 \)の係数について考える。

\( n = 3 \)の時、\( P(y + 1) = (y + 1)^{2n} – n(y + 1)^{n + 1}+ n(y + 1)^{n – 1} – 1 \)について二項定理を適用する。\( y^3 \)の係数を\( A_{3} \)として、
$$ A_{3} = {}_6 \mathrm{C} _3 – 3 \times {}_4 \mathrm{C} _3{} = 20 – 12 = 8 $$
\( n > 3 \)に対し、\( y^n \)の係数\( A_{n} \)を\( n \)を用いて表す。
\begin{eqnarray}
A_{n} & = & {}_2n \mathrm{C} _3 – n \times {}_{n + 1} \mathrm{C} _3 + n \times {}_{n – 1} \mathrm{C} _3 \\
& = & \frac{2n(2n – 1)(2n – 2)}{6} – n \frac{(n + 1)n(n – 1)}{6} + n \frac{(n – 1)(n – 2)(n – 3)}{6} \\
& = & \frac{(8n^3 – 12n^2 +4n) – (n^4 – n^2) + (n^4 -6n^3 + 11n^2 -6n)}{6} \\
& = & \frac{2n^3 – 2n}{6} \\
& = & \frac{(n – 1)n(n + 1)}{3}
\end{eqnarray}
となり、\( n> 3 \)のとき\( A_{n} \)は\( 0 \)でない。

従って、\( y^3 \)で\( P(y + 1) \)を割った余りは\( 0 \)となるが、\( y^4 \)で\( P(y + 1) \)を割ると\( 8y^3 \)が余り、割り切れない。

(3)\( P(x) = 0 \)は、以下のように変形できる。
$$ x(x^{2n -1} -nx^n +nx^{n – 2}) = 1 $$
この方程式の整数解を\( k \)とおく。この時、
$$ k(k^{2n -1} -nk^n +nk^{n – 2}) = 1 $$
が成立。今、\( k, \) \( k^{2n -1} -nk^n +nk^{n – 2} \)は共に整数であることを考慮すれば、
\begin{cases}
k = \pm 1 \\
k^{2n -1} -nk^n +nk^{n – 2} = \pm 1 (複号同順)
\end{cases}
である。

実際、\( P(1) = 0 ,\) \( P(-1) = 0 \)が成立し、方程式\(P(x) = 0 \)が整数解\( k \)を持つとき、それらは\( \pm 1 \)となる。

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以上が解答例になります。今回の問題では多項式の割り算を扱いました。多項式の割り算においては、「割り切れる」というのは当然余り0で、「割り切れない」というのは割る式よりも低次な多項式\( r(x) \)が存在するということです。整数とはちがって、余りの正負や大小でなく、注目するのは次数ということでした。

発想・方針のまとめ

多項式を割ろう、と考えるとき、やはりその係数がどのような値か(特に、係数が\( 0 \)であると楽)というのは重要な情報です。また、今回では\( (x – 1)^3 \)で割ることを考えましたが、それよりも文字を置き換えて\( y^3 \)で割ることを考えた方が計算がはるかに楽になります。(1)の置き換えもまさしくこのためのヒントでしょう。以上を踏まえると、置き換えの結果\( (y + 1)^{2n} \)のような、n乗の多項式が出てきて、係数に注目したいということから二項定理を使う、という発想に至るわけです。

今回の記事は上記がまとめのようなものですから、これにて終わりにしましょう。お疲れさまでした!