ベクトルの外積って?定義から性質・使い方まで解説してみた【数学B】

2021年1月31日

どうも!受験コーチSHUです。

本日はベクトルの基礎知識+α(内積の図形的なイメージ)と外積について解説しようと思います。

はっきり言って、入試問題においてわざわざ外積を使わないと解けない問題は出題されません。ですが、外積がどんな演算かをきちんと知っておくことで数学だけでなく、物理(特に電磁気)の見通しも良くなります。

なので、今回の記事ではベクトルの基本的な知識を確認し、外積について定義から応用例まできちんと解説します。この記事をしっかり理解し、入試の数学や物理を考える道具の一つとして扱えるようになってくれたら幸いです。

ベクトルの知識を確認(内積とその応用)

※高校までの数学・物理で考えるベクトルは二次元か三次元の実数を成分に持つベクトルなので、基本的には座標平面と座標空間で話を進めます。実際にはn次元ベクトルに拡張していくことが可能です。詳しい話は大学の線型代数学で。

n個の実数を並び順を考慮して並べた組 \( (x_1, x_2, x_3, … , x_n) \) 全体からなる集合を \( \mathbb{R} ^n \) と表し、これをn次ユークリッド空間と言います(\( \mathbb{R} \) は実数全体の集合を意味する記号です)。特に \( n=2, 3 \) の時が、いわゆる座標平面と座標空間に対応しています。

\( \mathbb{R}^n \) の要素をベクトルと呼びます。

ベクトルは実数の「並び」も考慮していますから、「方向」と「大きさ」を持つ量になるわけです。

ベクトルは向きと大きさを表す量ということで、一般的には矢印を用いて表記することが多いです。矢印の向きがベクトルの「方向」を、長さがベクトルの「大きさ」を表します。

向きと大きさが共に等しい場合のみ、ベクトルは等しいとみなされます。というのも、大きさが等しくても、数の「並び」すなわち「向き」が異なるベクトルはたくさんあるからです。

(図では二次元ベクトルを考えましたが、三次元でも同様です。)

内積

二次元のベクトル \( \overrightarrow{a} = (x_1, x_2) \) の大きさは、\( |\overrightarrow{a}| = \sqrt{x_1 ^2 + x_2 ^2} \) で与えられます。新たに \( \overrightarrow{b} = (y_1, y_2) \) というベクトルを考えるとき、「内積」という演算は次のように定義されます。

\begin{eqnarray}
\overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} &=& |\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|cos\theta \\
&=& x_1y_1 + x_2y_2
\end{eqnarray}

右辺に注目しましょう。ベクトルの大きさは実数であり、\( cos\theta \) も実数です。すなわち、内積を取ると実数が得られるわけです。

ここから、内積は「2つのベクトルから実数を定める演算」という事が言えます。

また、内積が0となるような時、「2つのベクトルは直交する」と言います。
※零ベクトルの場合でも便宜的に「直交」という事が多いようです。

このとき、\( cos \theta = 0 \) より \( \theta = \frac{\pi}{2} \) となります。

内積の図形的なイメージ

まず、正射影について確認しましょう。図のような \(\overrightarrow{a} \) と \( \overrightarrow{b}\) がある時、\( \overrightarrow{b}\) を \( \overrightarrow{a}\) 方向に正射影すると、次のような図が得られます。

ここで、正射影という言葉の意味を確認しておくと、図形Kのℓに対する正射影とは「図形K上の各点からℓに向かって下ろした垂線の足の集合」です。今回で言えば、\( \overrightarrow{b} \) を表す矢印上の各点から \( \overrightarrow{a} \) を表す矢印へ下した垂線の足全体が、上で述べた \( \overrightarrow{b}\) の \( \overrightarrow{a}\) 方向への正射影です。この時、図形的に考えれば正射影の長さは \( |\overrightarrow{b}| cos\theta \) です。

さて、内積とは \( |\overrightarrow{b}| cos\theta \) に \( |\overrightarrow{a}| \) をかけたものです。すなわち、内積は
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} &=& |\overrightarrow{a}| \times (|\overrightarrow{b}|cos\theta) \\
&=& (|\overrightarrow{a}|cos\theta ) \times |\overrightarrow{b}|  
\end{eqnarray}
です。\( |\overrightarrow{a}| \times (|\overrightarrow{b}|cos\theta) \) とは \( \overrightarrow{b}\) の \( \overrightarrow{a}\) 方向への正射影を \( |\overrightarrow{a}| \) 倍したものという事ですから、内積は図形的には「\( \overrightarrow{a}\) ないし \(\overrightarrow{b} \) 方向の移動量の積」という風に解釈することができます。

ただし、大事なのは結局は内積が「ベクトルから実数を得る演算」ということです。あくまで図形的な意味を考えたにすぎません。

せっかくの機会なので内積について少し詳しく見ていきました。次は外積を見ていきましょう。

本題:外積とは何か

さて、内積は「2つのベクトルから実数を定義する演算」でしたが、外積はどうでしょう。

外積は「2つのベクトルから、それらの両方に垂直なベクトルを定義する演算」です。

\( \overrightarrow{a} = (a_1, a_2, a_3) \) と \( \overrightarrow{b} = (b_1, b_2, b_3) \) の外積 \( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} \) は、
$$ \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} = (a_2b_3 \,  – a_3b_2, \,  a_3b_1 \, – a_1b_3, \, a_1b_2 \, – a_2b_1) $$
として与えられるベクトルです。なんだか覚えにくいと思うので、簡単な覚え方を下に紹介しておきます。

ただ、これは本質的ではありません。外積の本質は「2本のベクトルに直交するベクトル」です。つまり、\( \overrightarrow{c} = (p, q, r) \) が \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) の両方に直交するような \( p, q, r) \) を求めればよいだけなのです。これは連立方程式を解けばいいだけですから、そこまで難しい話ではありませんよね。

さて、このベクトルを \( \overrightarrow{c} \) と置くとき、\( \overrightarrow{c} \) は次の性質を満たします。

外積の定義 外積とは
$$ \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} = (a_2b_3 \,  – a_3b_2, \, a_3b_1 \, – a_1b_3, \, a_1b_2 \, – a_2b_1) $$
として与えられるベクトルのことを言う。このベクトルを \( \overrightarrow{c}\) とおくと、

  1. \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) の両方に直交し、その向きは \( \overrightarrow{a}\) から \( \overrightarrow{b} \) の方へ向かうように右ねじを回した時にねじが進む方向と一致する。
  2. \( \overrightarrow{c}\) の大きさは、 \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) を二辺とする平行四辺形の面積に等しい。

これだけだと分からないと思うので、補助的に図を下に示します。

\( \overrightarrow{a} \) と \( \overrightarrow{b} \) が平行なベクトルの時、外積の大きさが0となることから \( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} = \overrightarrow{0} \) とします。

また、外積という演算には次のような性質が成り立ちます。

外積の性質

外積は次の性質を満たします。

  1. \( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} = -(\overrightarrow{b} \times \overrightarrow{a}) \)
  2. \( ( k \overrightarrow{a} ) \times \overrightarrow{b} = k (\overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b}) \ \, (kは実数) \) 
  3. \( \overrightarrow{a} \times (\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} ) = \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} + \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{c} \)

それぞれ簡単に説明します。

1つ目ですが、\( \overrightarrow{b} \times \overrightarrow{a} \) は \( \overrightarrow{b}\) から \( \overrightarrow{a} \) の方へ向かうように右ねじを回したような時を考えていますから、ねじの進む方向は逆になります。当然、ベクトルの向きは反対になるのでマイナスが付きます。

2つ目についてです。外積を取ってからk倍する場合と、k倍してから外積を取る場合も得られるベクトルは変わりません。これは、実際に成分計算を考えれば容易に証明できます。

3つ目についてです。つまり、これは分配法則が成り立つという事です。ちなみに、内積においても分配法則が成り立つことはきちんと押さえておきましょう。証明の1つは、両辺について成分計算をすればOKです。少し複雑な証明を載せておくので、興味がある人は読んでみてください。一応下に書いておきます。

(等式3の証明)
\( \overrightarrow{a} \times (\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} ) = \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} + \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{c} \)を示す。

\( \overrightarrow{b} \) を \( \overrightarrow{a} \) と平行な成分 \( \overrightarrow{b_{par}} \) と \( \overrightarrow{a} \) に垂直な成分 \( \overrightarrow{b_{ver}} \) に分ける。この時、\( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} \) は \( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b_{ver}} \) と一致するから(なぜなら、\( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b_{par}}\) は \( \overrightarrow{0} \))、次の等式が成り立つ。
\begin{equation}
\overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} = \overrightarrow{b_{ver}}
\end{equation}

また、同様に \( \overrightarrow{c} \) も \( \overrightarrow{a} \) と平行な成分、垂直な成分に分ける。つまり、2つの等式
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{b} = \overrightarrow{b_{par}} + \overrightarrow{b_{ver}} \\
\overrightarrow{c} = \overrightarrow{c_{par}} + \overrightarrow{c_{ver}}
\end{eqnarray}
が成り立っている。

辺々加えれば
$$ \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} = ( \overrightarrow{b_{par}} + \overrightarrow{c_{par}} ) + ( \overrightarrow{b_{ver}} + \overrightarrow{c_{ver}} ) $$
である。

\( ( \overrightarrow{b_{ver}} + \overrightarrow{c_{ver}} ) \) は \( \overrightarrow{a} \) と垂直なので、
\begin{equation}
( \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} )_{ver} = \overrightarrow{b_{ver}} + \overrightarrow{c_{ver}} 
\end{equation}
が成り立つ。 

以上より、
\begin{equation}
\overrightarrow{a} \times (\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c}) = \overrightarrow{a} \times (\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c})_{ver} = \overrightarrow{a} \times ( \overrightarrow{b_{ver}} +  \overrightarrow{c_{ver}} ) 
\end{equation}
が成り立つ。

さて、\( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b_{ver}} \) は、\( \overrightarrow{a} \) に垂直な平面内において \( \overrightarrow{b_{ver}} \) を \( \overrightarrow{a} \) を中心に90°回転し、大きさを \( |\overrightarrow{a}| \) 倍して得られるベクトルを指す。すなわち、\( \overrightarrow{b_{ver}} \) に左から \( \overrightarrow{a} \) をかけることは、\( \overrightarrow{b_{ver}} \) の拡大回転を意味する。ある2つのベクトルについて、足してから拡大回転しても、拡大回転してから足しても同じベクトルが得られるので、
$$ \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b_{ver}} + \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{c_{ver}} = \overrightarrow{a} \times (\overrightarrow{b_{ver}} + \overrightarrow{c_{ver}}) $$
が成り立つ。

以上より、ここまでで得られた等式を合わせれば
$$ \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} + \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{c} = \overrightarrow{a} \times (\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c}) $$
が成り立つ。

外積の応用例

外積はどのような場面で有効になるか、その定義や性質から考えてみましょう。すると、次のような時に有効であることが分かります。

  • ある平面の法線ベクトルを求める
  • (一次独立な)2つのベクトルが作る平行四辺形の面積を求める
  • 四面体の体積を求める
  • 3つのベクトルが一次独立であるか判定する

ここで登場した一次独立、という言葉について確認しておきます。ベクトル \( \overrightarrow{a_1} , \overrightarrow{a_2}, \overrightarrow{a_3}, \cdots , \overrightarrow{a_n} \) が一次独立である、とは
$$ x_1 \overrightarrow{a_1} + x_2 \overrightarrow{a_2} + x_3 \overrightarrow{a_3} + \cdots + x_n \overrightarrow{x_n} = 0 \Rightarrow x_1 = x_2 = x_3 = \cdots = x_n = 0 $$ 
が成り立つことを言います。簡単に言えば、ベクトル \( \overrightarrow{a_1} \cdots \overrightarrow{a_n} \) がいずれも平行でないという事です。

上に示した応用例について、具体的に解説していきます。

外積を利用して法線ベクトルを求める

これは外積の定義から明らかです。2つのベクトル \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) が平行でない時、外戚は \( \overrightarrow{0} \) ではありません。平行でない2ベクトルがあれば、それを基準として平面を作ることができます。

外積 \( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} \) は \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) の両方に垂直なベクトルを表しますから、 \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) が作る平面に垂直なベクトルでもあるという事です。

外積を利用して平行四辺形の面積を求める

外積 \( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} \) の大きさは \( \overrightarrow{a} \) と \(\overrightarrow{b} \) が作る平行四辺形の面積に等しいということを利用して、空間内の平行四辺形の面積を簡単に求めることができます。

例えば、この問題では四角形OPQRは平行四辺形です。\( \overrightarrow{OP} \) と \( \overrightarrow{OR} \) が平行四辺形OPQRを作っていますから、この面積は外積 \( \overrightarrow{OP} \times \overrightarrow{OR} \) の絶対値に等しくなります。

Oを原点とする座標空間を考えれば、\( P(1, 0, tan\alpha) \) で、同様に \( R(0, 1, tan\beta) \) ですから、外積 \( \overrightarrow{OP} \times \overrightarrow{OR} \) を考えて、
$$ S = | \overrightarrow{OP} \times \overrightarrow{OR} | = \sqrt{1 + tan^2 \alpha + tan^2 \beta} $$
となります。

外積を使わずとも面積は簡単に出るのですが、大丈夫でしょうか?

そうです。
$$ S = \sqrt{ |OP|^2 |OR|^2 \, – ( \overrightarrow{OP} \cdot \overrightarrow{OR} )^2} $$
を利用すればよいのですね。外積を使ってもいいですが、こういったシンプルな考え方をできるかという事は重要です。

外積を利用して四面体の体積を求める

外積を利用することで、四面体の体積を簡単に求めることができます。3つのベクトル \( \overrightarrow{a} , \overrightarrow{b} , \overrightarrow{c} \) によって作られる四面体の体積を考えます。

\( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} \) と \( \overrightarrow{c} \) のなす角を \( \theta \, \, ( 0 < \theta < \frac{\pi}{2} )\) とするとき、\( \overrightarrow{a} \) と \( \overrightarrow{b} \) がなす平面を底面と見れば、高さは \( |\overrightarrow{c}| sin(\frac{\pi}{2} – \theta) = |\overrightarrow{c}|cos \theta \) になります。従って、四面体の体積をVとすれば、
\begin{eqnarray}
V &=& \frac{1}{3}  \frac{1}{2}  | \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} |  |\overrightarrow{c} | cos \theta \\
&=& \frac{1}{6} ( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} ) \cdot \overrightarrow{c}
\end{eqnarray}
が成り立ちます。

外積を利用して一次独立を判定する

先ほど一次独立について確認しましたね。

3つのベクトル \( \overrightarrow{a} , \overrightarrow{b} , \overrightarrow{c} \) が一次独立であるとは、 \( \overrightarrow{a} , \overrightarrow{b} , \overrightarrow{c} \) のいずれも平行でないという事です。

平面上の2つのベクトルが一次独立であるとき、平行四辺形をなしますが、空間内において3つのベクトルが一次独立であるとき、平行六面体を作ることができます。

平行六面体を適当に切断すると四面体が得られますから、3つのベクトル \( \overrightarrow{a} , \overrightarrow{b} , \overrightarrow{c} \) が一次独立であることを確認するには、平行六面体が作られること、すなわちその平行六面体の一部である四面体の体積が0でないことを利用すればよいのです。

従って、3つのベクトル \( \overrightarrow{a} , \overrightarrow{b} , \overrightarrow{c} \) が一次独立であるとき、
$$ ( \overrightarrow{a} \times \overrightarrow{b} ) \cdot \overrightarrow{c} ≠ 0 $$
が成り立ちます。

このことを利用して一次独立かどうか確認できます。

まとめ

内積の少し発展的な話、そして外積について確認しましたが、外積を使わないと理解できないことというのは実際ありません。

ですが、この性質を上手く使えば特に空間図形の問題において有効な解法となることもあります。

何よりも大事なことは、今まで教科書で習ってきた基本を大事にし、その発展として外積を考え、基本の考えの1つとして外積を見てあげることです。

それでは。